作りたいパワーをもらえる、おすすめブック3冊。

ごはんでも、文章でも、何かをつくりたくなる気持ちは、日々の生活必需品です。

自分の中から無限に湧いてくるなら、それが一番ラクなのですが、なかなか自家発電でひねり出せない日もあります。

そんなときに、読むだけで力がもりもり湧いてきて、ぱっと目の前がきらめいてしまう本があります。

やりたいことはあるのに、どうしてもできないときに。力をもらえるパワフルな本をご紹介します。

ごはんを作りたくないときに、お腹にじんわり効くブック

「わたしを空腹にしないほうがいい」

くどうれいん

手の平サイズのこの本は、友人の書いたブックレビューではじめて存在を知りました。

中には、食の風景にまつわる短いエッセイがいくつも入っています。

ごはんを作って食べる瞬間に、かけがえのない時間がいくつも流れていて、ひとつかふたつ、おやつをつまむみたいに読む日々のなんと楽しいこと。

でも、この本が最高に効くのは、どうしたってごはんを作りたくない、だめだめな日

もういやだ。今日の私は、ごはん作るor DIEだ。と言いたくなるほど、ごはん作りたくない症候群にかかる日が私にはたまにあり、そんなときに憂鬱をぶっとばせるのは熱くて辛いカップラーメンだけだと思っていました。

でも、床にぺったり座り込んでこの本をぱらぱらめくっていたら、よし、ガーリックライスを作ろう。と思うことができたのです。

材料は有り合わせ。チューブのにんにく、蕪の葉っぱ。みじんぎりの玉ねぎに、少しのウインナー。それからぐっと大きめのスプーンをバターに突き刺して、ぐりんと多めにたっぷり取る。本と同じ具材は用意できなかったけれど、バターたっぷりだけは、本とお揃い。

家にあるものだけで雑にガッと作るガーリックライス。黒こしょうをじゃんじゃんかける頃には、もりもりの食欲に支配され、スプーンでぱくぱく食べたら、すっかり元気になっていました。

ごはんを食べることの喜びとせつなさに満ちみちているばかりか、ごはんを作れない日の、特効薬にもなってしまう、べらぼうにすてきな一冊です。

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参考 わたしを空腹にしないほうがいいBOOKNERD


ビブリオアパートメントはこちら。

参考 ビブリオアパートメントBIBLIO APARTMENT 本好きの住む、架空のアパート。友人のtakaちゃんは403号室に住んでいます。
住人さんのブックレビューのどれもがとてもよくて、図書館に通う小学生のように、ちょくちょくおじゃましています。

静かにそっと、創作意欲が増すブック。

「砂丘律」

千種創一

触れると乾いたガサガサの紙。海外のノートのような、不思議なつくり。手にする前から、この装丁を知っていたような気がしました。

twitterでいつかめぐってきたRTの中に、この本の中の一首がありました。

アラビアに雪降らぬゆえただ一語ثلج(サルジュ)と呼ばれる雪も氷も

忘れられない鮮烈な言葉。焼き判で押されたみたいに、頭から離れず、どうしてもこの本が欲しくなりました。

そのときは売り切れで、しばらくの間Amazonの入荷連絡を貧乏ゆすりで待ち、タッチの差で在庫ゼロになってしまうことを何度か重ね、最終的に出版社さんへ連絡し、原始的なやり方で取り寄せしました。

実物を手にいれて、まとめてたっぷり味わうと、ため息をつきたくなるほどさらに良いんです。

いくつか好きな短歌を引用します。

閉じられないノートのような砂浜が読め、とばかりに差し出されている

切り出された最小限の言葉たちの行間から、映像があふれてくるようです。

あっ、ビデオになってた、って君の声の短い動画だ、海の

(海の写真を撮ろうとして、うっかり撮影モードをMovieのままにしてしまった人のアーカイブと人柄を、目を細めてながめてる感じ。)

ぎりぎりまで明かり落とすと炭酸を飲み干す気配が横でしている

(家で映画をみようとして明かりを落としたら、もう隣のひとはごくごくコーラを飲み始めていたのかな。)

などなど、想像をめぐらせる楽しさが、ページをめくるたびに広がります。

筆者の千種さんは中東在住。遠く離れた砂混じりの景色が垣間見えることもあれば、ごく普遍的な日常の一場面を切り取ったものもある。そのどれもがまばゆく、どこか乾いた温度が心地よい。

私は好きな言葉を、手帳に書き写すことをひとつの趣味にしているのですが、この歌集をひらいて写しだしたら、まるまる一冊を写経のように、書き写してしまいそう。そのくらい、頭の先からしっぽまで、どこから開いてもハッとする言葉が詰まっています。

そして、美しい言葉たちに触れていると、自分も何か書いてみたい気持ちになるから不思議です。気だるい休日の昼下がりに、寝っ転がってこの本をめくるだけで、いい時間をすごすことができます。

朝に夜に、すべての季節に、ぱらぱらめくっては感嘆していたい一冊です。

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参考 青磁社青磁社

作りたい!の情熱みなぎる、すてきでかわいい豪腕ブック。

「かわいいウルフ」

小澤みゆき

160ページもあるリトルプレス。ヴァージニア・ウルフを「かわいい」という切り口から見つめる、圧倒されるパワーの一冊です。

本全体が、作ることが楽しくて仕方ない!というパワーに満ちていて、ウルフのことを全く知らない人間でも、ぱらぱらとページをめくるだけでうきうきしてしまいます。

そして、可愛らしさと同時に「豪腕」という言葉すら思い浮かぶ、驚異の編集力。

編集者の小澤さんは、こちらをたった3ヶ月ほどで作ったとのことですが、並々ならぬ情報量と熱量は、こんなにも短期間で作られたとは思えないほど、めちゃくちゃ骨太で格好いい本なのです。

作品内の料理を作ってみるという、実験的な企画もあれば、翻訳者のインタビューや寄稿もあり、漫画ありイラストあり。ページをめくるたびに、めくるめくウルフ像が浮かび上がります。

中でもお知り合いに、ウルフの短編を(無理やり)読んでもらい、感想文を書いてもらうという「ウルフのティーパーティー」という企画がたのしく、メンバーの中に混ぜてもらった気持ちで、同作品を読むという楽しみを味わうことができます。

(執筆陣全員が、別段ウルフに明るいわけではなく「気が散って仕方なかった」「兎にも角にも疲れてしまった」等、愛すべき身も蓋もない感想もあるところがとても好きです…!)

色とりどりの宝石のような、原稿群をまとめあげる編集の巧みさもさることながら、「この本最高!!」と言わんばかりの作る喜びが、端から端まで満ちみちているところがとても好きです。

私は、20代の頃に「灯台へ」に挑戦し、その難解さに読み切れぬまま脱落した、ウルフ落伍者なのですが、この本を読んでから読書欲が猛烈に着火。気がつけばダロウェイ夫人を購入しておりました。

世にも可愛らしく勇敢な一冊を片手に、ウルフ初心者マークを貼り付けて挑んでみたいとおもいます。

公式サイトでは、たっぷりしたおまけのPDFもダウンロードすることができます。これを無料で?!と言いたくなるくらい、おもしろかわいい読み物がたっぷり。こちらを試し読んでから、本誌を購入するのもおすすめです。

参考 かわいいウルフかわいいウルフ

さいごに

料理ひとつ作りたくない日曜の夜に、何もしたくない低気圧の休日に、読書のすすまない眠る前、やる気を着火させてくれる三冊をご紹介しました。

私は約一ヶ月前にこのブログを作ってから、いつでも心のどこかに「書かねば」という漬物石のような気持ちと、しょぼしょぼの文章を世に出す恐怖が心に押し座っていました。

でも、上のすてきな三冊を読んでみたら、心がとても軽くなり、とにもかくにも腕を動かそう。という勇気がわいてきました。ただただ楽しく書くことを、思い出しつつあります。

リトルプレスに近い三冊なので、amazonワンクリックでは手に入らない、「わざわざ取り寄せる」というひと手間が必要なところも、ポストに届いた瞬間、新鮮なよろこびがありました。ぜひお手に取って頂けたらと思います。